東日本大震災5周年記念イベント:絆5 〜Voices of The Youth〜
シカゴから被災地へ、被災地からシカゴへ。



 東日本大震災から今年で早や5年。震災では1万6000人あまりの尊い命が奪われ、今なお24万人の方々が故郷から離れ心落ち着かない暮らしを強いられている。「復興」の二文字はまだ遠く、いやがおうにも薄れていく記憶は、さらに歯がゆい。
 2011年の震災後、被災地から遠く離れたここシカゴでも、あるプロジェクトが立ち上がった。「絆」と名付けられたこのプロジェクトは、震災の記憶を薄れさせず米国市民に被災後の姿を伝えつづけようと、シカゴ姉妹都市インターナショナル大阪委員会が中心となって、在シカゴ日本国総領事館、シカゴ日米協会、シカゴ日本商工会議所、ジェトロ・シカゴ事務所と震災関連プログラムを共催してきた。
 
 震災5年目の節目となる2016年のテーマは「Voices of the Youth - 東北の若者とその未来」。青少年とその未来に焦点を当て、被災地の若者たちが災害から学んだこと、共有したこと、そして彼らの人生に与えた影響と世界観を探る内容で、写真展、青少年交流、経済セミナー、パネルディスカッション、短編映画上映、青少年ビデオ・メッセージなどのさまざまなプログラムが用意されている。その口火を切って3月6日、「絆KIZUNA5〜追悼式〜」が市内で盛大に開催された。

  
会場となったシカゴ・カルチュラル・センターは1897年に町の最初の図書館として建てられ、現在も市民のための文化イベントに使われている。セレモニーが行われたPreston Bradley Hallの世界一大きい直径11.5mののティファニー製ドームは、約3万のガラス片から作られており、その美しさに訪れた人はため息。

 
  
 シカゴ姉妹都市インターナショナル大阪委員会の代表で、「絆」プロジェクト・リーダーの野毛洋子さん(右上写真)が厳かに開会のご挨拶を述べ、続いてスクリーンに被災地の子供たち5人からのビデオ・メッセージが映し出された。このビデオ・メッセージ・プロジェクトは、福島市の桜の聖母学院で英語を教えるシカゴ生まれの日系アメリカ人、藤平明彦氏が発案したもの。これを受け、KIZUNA5チームビデオ班のウェスリー・ジュリアン(Wesley Julian)さんと白石早美さんが2015年8月に東北に飛び、福島・宮城・岩手3県の生徒たちから合計約250のメッセージを集めた。ビデオ編集や翻訳作業にはシカゴ美術館スタッフなど多くの有志がボランティアで参加し、数百時間を費やして仕上げた。
 
 「将来は大工になって壊れない家を作りたい」、「世界に先駆けた車を作る技師になりたい」、「明日死んでしまうかもわからないから、一日一日を精いっぱい行きたい」・・・幼くして目の前で多くの大切なものを失った体験をした彼らにとってのこの5年間は、大人たちのそれとは比較にならないほど長く重かったろう。それでもじっとカメラの先を見つめ、笑みをもたたえながらたくましく将来の夢を語ってくれる姿に、こちらのほうが励まされ、胸が熱くなる。
 会場には、メッセージを寄せてくれた一人、尾形智志(おがた・さとし)君の姿もあった。シカゴの高校生たちに招待されて今回のシカゴ訪問が実現したそうで、「会場の皆様こんにちは。今日ここで皆様に会えてとてもうれしいです」とはにかみながら英語で挨拶する彼に、あたたかな拍手が贈られた。
(※ビデオメッセージはこちらからご覧いただけます。
 さらに、Lisa Kohnike氏がエマニュエル・シカゴ市長からの親書を代読し、「2016年3月11日を東日本大震災の記念日"Voice of The Youth DayWとする」と宣言。Dennis Jung氏が「イリノイの人たちは被災者のことを忘れはしない。より強い絆で友好関係を築いていく」という、ラウナー・イリノイ州知事の言葉を伝えた。

岩藤俊幸在シカゴ日本国領事館総領事と尾形智志くん、
総領事は
来賓ごあいさつで、「これからの復興は若者にゆだねられている」と、被災地の若者にエールを送った。

     
   (左)シカゴ仏教会のPatti Nakai僧侶の読経のなか、犠牲者の魂に祈りを捧げる岩藤総領事
    (右)前シカゴ日米協会理事のEd Grant氏に、子供たちから花束のプレゼント

モンテソーリ・ランゲッジ・アカデミーの子供たちによる歌の贈り物。小さな体からほとばしるパッションに圧倒され、涙する大人たちが続出

 野毛さんによると、この追悼式を開催するにあたり、1年前から多くのボランティアを含むプロジェクトメンバーが準備を進めてきたという。数年前までは「絆プロジェクト」さえも知らずにいた人が一人、またひとりと声を掛け合って集まり、助け合い、自分の時間を捧げ、各々の得意分野で力を発揮してこの日を迎えたのだった。
 
  
     受付、会場設営、軽食サービス、手作りの募金箱、ビデオメッセージ編集など、ボランティアの力が結集した。

 ビデオメッセージを集めたビデオ班のウェスリー・ジュリアンさん(写真右上)も、そのひとり。元JETプログラムの一員として宮城県で英語教師をしていたウェスリーさんは、震災当時、昔の教え子たちの卒業式に参加するため来日し惨状を目の当たりにした。アメリカに戻ったあとも、被災地で懸命に活動するボランティアたちを追ったドキュメンタリー映画『東北友』を自作、国内外30以上の地域で上映した。これに続く第2作『113プロジェクト』もこの度完成し、予告編が会場で発表された。「ボランティアの作業は本当に大変で、毎日が時間とのたたかいでした。でも情熱を持てる大変さだから全く苦にはならなかったですよ」

    
式典会場には、仙台在住で被災状況を追い続ける写真家、宍戸清孝氏の写真が展示された。各々の写真パネルには QR コードが付けられ、観客がスマートフォンで被写体の子供のビデオ・メッセージを鑑賞することができる。



(左)宍戸氏と写真展監修・キュレーターのロヨラ大学のジャマソン・チェン教授


 追悼式の最後は、気仙沼市立鹿折(ししおり)小学校の子供たちがこの式典のために贈ってくれた合唱ビデオに合わせ、会場に集まった人たち全員で、震災の応援歌『花は咲く』を唄って締めくくった。

花は 花は 花は咲く
いつか生まれる君に
花は 花は 花は咲く
私は何を残しただろう
花は 花は 花は咲く
  いつか恋する君のために・・・






 絆5の関連イベントは3月25日までシカゴ市内で続く。シカゴ近辺に在住の方、シカゴに訪れる予定の方はこの機会に是非足を運んでほしい。そして、若者たちの未来に思いをはせてほしい。



  (2016年3月6日   文責・撮影:長野尚子 Text & Photo by Shoko Nagano )
※その他の写真やビデオはUS新聞.comのFacebookページでご覧いただけます。こちらからご覧ください。



■ シカゴでの絆5関連イベント予定
●東北の子供たちをテーマにした写真展
3月7日〜11日まで
会場:James R. Thompson Center Lobby, Chicago
3月14日〜25日まで
会場:Richard J. Daley Center Lobby, Chicago
日本経済新聞社から提供された過去 4 年間の震災写真アーカイブから抜粋したプロスペクティブ(回顧)写真に加え、仙台在住写真家の宍戸清孝氏による「Children ofTohoku」を展示。宍戸氏は東北の被災状況を追う写真集「Home 美しき故郷よ」を出版し、その後も震災関連の写真を撮り続けています。同氏は過去 2 年間、絆プロジェクトに参加し、素晴らしい作品を写真展に提供してきました。絆 5 では、 ビデオ・メッセージに登場する子供たちのポートレートを撮影しました。写真展ではパネルに QR コードを付け、観客がスマートフォンで被写体の子供のビデオ・メッセージを鑑賞できます。写真展監修・キュレーターはロヨラ大学のジャマソン・チェン教授。

●東北経済セミナー
主催:シカゴ日米協会、企画・共催:ジェトロ・シカゴ事務所、共催:在シカゴ日本国総領事館
3 月 9 日(水) 5:30?8:15PM
会場:Grant Thornton, 171 N. Clark St. #200, Chicago
入場無料。参加ご希望の方は次のサイトからお申込みください。
www.jaschicago.org
東北経済セミナーは Kizuna 5 関連プロジェクト。シカゴ日米協会主催で、ジェトロ・シカゴ事務所が企画・共催、在シカゴ日本国総領事館が共催。東北地域の企業の復興活動にハイライトを当て、東北の現状と日本政府の東北復興経済対策について情報を提供します。ゲストスピーカーには、東日本大震災で被災した後、復興支援に大いに貢献しているアイリスオーヤマ鰍フ米国法人 IRIS(アイリス) USA 社から大山晃弘(オオヤマ・アキヒロ)チェアマンを迎えます。また、曽根一朗ジェトロ・シカゴ所長、宮城県庁関係者が講演。セミナー終了後はネットワーキング(情報交換会)のためのレセプションを開催します。同セミナーは、シカゴ日本商工会議所創立 50 周年記念事業の一環として実施します。

●自然災害の緊急対応と国際パートナーシップについてのパネルディスカッション
シカゴ日本国総領事館主催
3月14日(月) 5:20PM 受付開始。6:00PM プログラム開始
会場:Japan Information Center, 737 N. Chicago Ave, Suite 1000, Chicago入場無料。参加ご希望の方は次のサイトからお申込みください。
kizuna5panel.app.rsvpify.com
『自然災害への緊急対応と国際パートナーシップ』をテーマに,近年地震や津波の被害を受けたネパールやフィリピンの代表,緊急支援の専門家等をパネリストに迎え,東日本大震災をはじめ,世界中で発生する自然災害や災害対策,国際的な協力体制,国際支援の在り方等について議論します。モデレーターは米国赤十字シカゴ・イリノイ北部地域災害担当のハーレー・ジョーンズ氏。

●短編ドキュメンタリー映画『 113 Project』上映会
3月7日より次のサイトで公開されます。
www.113Project.org
「113 Project」はウェスリー・ジュリアン氏制作の東北ドキュメンタリー映画。 シカゴ在住映像プロデューサーのジュリアン氏は,JETプログラム参加者として2008年から2010年まで宮城県の小中高校に勤務した後、2011年の春に同県の中学校の卒業式に出席していた際に東日本大震災を体験し,同じ英語教師のアメリカ人の友人を失いました。以来、東北のドキュメンタリーを撮り続けており、Kizuna 5プロジェクトの一環として、東北の祭を背景に、災害から立ち上がる若者の姿を追い映画化しました。2015年8月下旬にも東北を訪問し、仙台在住写真家の宍戸清孝氏と共に東北の子供たちやその世界観を写真と映像で捉えました。

※絆Kizuna 5共催団体、協賛企業・個人: All Nippon Airways; Barnes and Thornburg LLP; Garrett Popcorn; Grant Thornton LLP; Gudonin Buddhist Temple; Hekiun Oda; Hideo Suzuki; JCCC Foundation; Kikkoman Foods, Inc.; Kimiyo Naka; Kioto Aoki;Kiyotaka Shishido Photo Studio; Kubota Engine America; Loyola University Chicago's, School of Communication; M Square Inc.; Masuda, Funai, Eifert & Mitchell, Ltd.;Mayumi Lake; Matsutani America; Nagle Photography; NAMCO USA Inc.; OMRON, Management Center of America; Pacific Liaison Services, Inc.; Richard Robinson;Shiho Akaike Graphic Design; Sumitomo Corporation of Americas; Tatsu Aoki; Tokyo, Commodity Exchange, Inc.; Tsukasa Taiko; Uniqlo; Yaskawa America, Inc.

本サイトにおける東日本大震災関連の過去の記事

「シカゴから日本へ届け。日本救済・応援の輪」 (2011年4月)

「シカゴ・ブルース・ミュージシャンたちが日本に捧げる、渾身の応援・鎮魂ブルース(Pray For Japan. Play For Japan)」 (2011年6月)

「あの日を忘れない。〜大震災1周年メモリアル写真展 (2012年3月)」

東日本大震災ドキュメンタリー映画『東北友』(TOHOKUTOMO)プレミア上映会 (2014年3月)



ホーム | 初めての方へ | お問い合わせ | 投稿者&ライター募集中! | 規約と免責事項 | 会社概要

Copyright (c) 2005 US Shimbun Corporation. All Rights Reserved.