SHOKOのシカゴ郊外の町から


著者略歴 長野尚子

イリノイ州在住フリーライター。
2001年、大手出版社の制作ディレクターを退職後、単身アメリカへ留学。
その後帰国し子育て関連誌の編集者を経て、結婚を機に 2006年3月より再びカリフォルニア州バークレー市へ。
主に教育・子育て、国際文化交流をテーマに人脈を広げながら執筆活動中。
2007年10月より、研究者である夫の仕事の関係でシカゴ郊外に移る。
趣味・特技はJazz(ピアノ&ヴォーカル)、剣道(四段)。好きなことは食べることと飲むこと。
バークレーでの3年間の留学生活を綴った「たのもう、アメリカ。」(近代文芸社)発売中。


バックナンバー
         4年ぶりに完全復活!ココ・テイラー・ブルースマシーン


 
去年の肌寒さがうそのような、真夏の快晴日。「シカゴ・ブルースフェスティバル」の最終日、メインステージPetrillo Music Shellの前の芝生は、午後5時を回った頃にはすでにこれから行われる夢のステージを見ようというブルースファンで埋め尽くされていた。

 そのステージとは、2009年6月に亡くなった“ブルースの女王”、ココ・テイラーを称えたスペシャルプログラム、“Celebrating Women in Blues - Tribute to Koko Taylor”。チック・ロジャース、ディートラ・ファー、ジャッキー・スコット、ノラ・ジーン・ブルーソという4人の女性シンガーたちが、ココに魂のブルースを捧げるというもの。彼女たちのバックをつとめるのが、ココを長年支えてきた“ブルースマシーン”だ。

 ココの亡くなる約1年前、ツアーの移動途中でバンドメンバーの乗ったバンが高速道路脇の壁に激突、全員が緊急搬送されるという痛ましい事故が発生。2001年からブルースマシーンでギタリストとして活躍するShun(菊田俊介)ほか、ギターのヴィノ・ラウデン、ベースのリッキー・ネルソン、ドラムのブライアン・T・パーカー、キーボードのスタン・バンクスも重傷を負い、以降このメンバーがそろってココと同じステージに立つことはついにかなわなかった。(ベースのメルヴィンはこのツアーに不参加で難を免れた)
(左から)Shun、俳優のスティーヴン・セガール、ヴィノ、ココ・テイラー、
リッキー、スタン、前はメルヴィン。(2007年9月2日ロングビーチ・ブルース・フェスティバル:写真提供/菊田俊介)

 
 そのブルースマシーンが4年という年月を経て完全復活、後方芝生席をも埋め尽くす約3万人のファンが見守なかメインステージに戻ってきた。2009年から台湾に移り、シカゴブルース魂をアジアへ受け継ぐべく活動をしているShunにとっても、メンバーとの再会は特別な思いだったようだ。
  「事故以降このメンバーで演奏するのは初めてですが、いったん一緒に音を出すと、ああ帰ってきたんだなぁという感慨が湧いてきますね」
 ココは今日、どこから見守っているのだろうか。
                           ココ・テイラーのご主人、ヘイズ・ハリス氏もバックステージに駆けつけた


個性と魂のぶつかり合う、圧巻の“女のステージ”

 最初に登場したのが、ヴァージニア出身(現在はボルティモア在住)のジャッキー・スコット。ゴスペルシンガーとして20年のキャリアを誇る彼女は、その後ブルースシンガーになるためシカゴへ。ココやビッグ・ママ・ソートンなどの影響を受け、独特のスタイルを磨き上げた。“魂の詰まったブルースとR&Bとのホット・コンビネーション”と評される、独特のパワフルな声に、瞬く間に会場が飲み込まれていく。
 2番手は、シカゴを代表するブルースシンガーの一人、ディートラ・ファー。アメリカ国内だけでなく、ヨーロッパやカナダでも積極的にツアーを行っている、実力、人気ともに高いシンガーだ。体の隅々から湧き出てくるようなソウルフルな歌声にのって、歌詞のひとことひとことがじんじんと伝わってくる。歌の世界に入りすぎたのか、歌い終わって思わずベースのメルヴィンと抱き合って号泣。ギターのヴィノも、思わずタオルで顔を拭う場面もあった。これぞブルース!
 ミシシッピ・デルタ出身のノラ・ジーン・ブルーソ。ブルースシンガーの父、叔父、ゴスペルシンガーの母のもとで歌うために産まれ、育った。シカゴでギタリストのジミー・ドーキンズに見いだされ、彼のバンドでキャリアを積んできたノラは、現在“シカゴ・ブルース界最も偉大なシンガー10人のひとり”と呼ばれている。独特の“うなり”をとどろかせながらでステージを練り歩く姿は、まさに歌うダイナマイトだ。
 最後を飾ったのが、チック・ロジャース。ココが認めた実力派で、同じメンフィスの出身ということもあってお気に入りの“秘蔵っ子”だった。その華奢な体つきからは想像できないような、ドスとグルーブの効いた迫力ある声で先の3人に負けじと観客を魅了していった。

 まったく個性の違う4人が、それぞれ独自のブルースの世界を繰り広げる。まさしく、Women In Bluesという名にふさわしい圧巻の80分だった。

 一方、ブルース・マシ−ンの面々も再会の喜びを音で伝え合うかのようなパフォーマンスを見せてくれた。微笑み合い、うなずき合い、体を揺すり、お互いの音にもだえ合う。彼らにとっての“母”、ココに捧げるステージを一番楽しんでいたのはきっと彼ら自身だったに違いない。
 「やはりリズムや音の厚み、シンガー達の歌はシカゴにしかないものでした。この中で自分はミュージシャンとして多くを教えられ、身につけ、自分の一部にして来たのだな、と振り返る事ができました」と 語るShun。
 
 事故やココの他界という苦難を乗り越え、さらにパワーアップした“新ブルースマシーン”の新たな一歩に、私もこの日立ち会うことができた気がした。
                                  ヴィノとShun。事故で一時は生命維持装置にかかっていた
                                  ヴィノの奇跡の復活に、思わず熱いものが込み上げる




(左)芝生席まで埋め尽くされたメインステージ前 
(右)終演後、ジャッキー・スコットを囲んでブルースマシーンが勢ぞろい。
左からスタン、メルヴィン、Shun、ジャッキー、リッキー
:写真提供/菊田俊介

ブルースマシーンが日本へ上陸
 
 その蘇ったブルースマシーン・バンドが、7月に青森で行われる「第10回ジャパン・ブルース・フェスティバル」に出演するため日本に上陸する(一部のメンバーは交代)。ココ・テイラーに代わるヴォーカリストをつとめるのが、シカゴ・ブルース・フェスティバルでココ・トリビュートの最後を飾ったチック・ロジャース。彼女にとっては初めての来日となる。
 「日本に行くのが今からとっても楽しみ!待ちきれないわ」とチック。ゴスペルでならした彼女の魂の歌声を、シカゴブルースの神髄を、一人でも多くの日本の皆さんに堪能してもらいたい。





10th Japan Blues Festival 2012 (青森)
7月19日(木)・20日(金)・21日(土)
 

◆出演
Koko Taylor's Blues Machine (ココ・テイラーズ・ブルース・マシーン)
Vino Louden(Vo,Gt) ヴィノ・ラウデン  
Shun Kikuta(Vo,Gt) シュン・キクタ
Melvin Smith(B) メルヴィン・スミス  
Brian T Parker(Ds) ブライアン・T・パーカー
Chick Rodgers(Vo) チック・ロジャース(亡きココ に代わるボーカル)
特別参加”山本恭司”(日本のスーパーギタリスト  20日、21日のみ)

The Lurrie Bell Blues Band w/Special guest Matthew Skoller(ザ・ローリー・ベル・ブルース・バンド・ウィズ・スペシャル・ゲスト・マシュー・スコーラー)
Lurrie Bell(Vo,Gt) ローリー・ベル 
Willie Hayes(Ds) ウィリー・ヘイズ
Felton Crews(B) フェルトン・クルーズ
Bill Sims Jr(Key) ビル・シムズ・ジュニア
Matthew Skoller(Harp) マシュー・スコーラー (特別出演)

詳細Web Site: http://www.aomori-yeg.jp/yasukata2012/blues/index.html
Japan Blues Festivalに関する過去の記事はこちら

◆ Shun Kikuta Band feat Chick Rodgers 日本公演予定
7月22日(日) 午後6時30分〜
スタジオJazz(蓮田SJビル1F)
出演:Shun Kikuta Band
菊田俊介(G&Vo)、片野篤(B)、金指典男(Dr)、谷浩明(Key) Chick Rodgers(Vo)
http://www.studio-jazz.jp/informrtion/index-26%28shunkikuta%20live2012summer%29.html

7月23日(月)
神戸チキンジョージCHICKEN GEORGE
チック・ロジャース(Vo),菊田俊介(G&Vo),清水興(B),Marty Bracey(Dr),祖田修(Key),Ayako Minami(Sax),堂地誠人(Sax)
http://www.chicken-george.co.jp/

7月24日(火) 18時 開場 19時 開演
原宿ミュージック・レストラン La Donna 
山本恭司(G),ファンキー末吉(Dr),片野 篤(B),Lee(Key)
http://www.la-donna.jp/performance/763.html
(24時間ネット受付)



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