
著者略歴 サリー
はじめまして。サリーと申します。シカゴに引っ越して2年、2歳児を抱えて日々生活にあえいでいるまもなく三十路を迎える主婦です。シカゴ市内南部より日々思ったことなどを気楽に読んでいただけるタッチで書いていけたらと思うのでよろしくお願いします。
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Aこれがアジアン珍道中
目的地も定かでないまま出発した珍道中、どうにかこうにか出発できたものの、不安はまだ残る。出発後1時間ほど経過して、やはりと思ったが、3歳の娘がぐずりだした。おなかがすいたのだ。良かったー、お弁当を持ってきて。しかし、狭い車の中、私達だけ食べ始めるのは気が引ける。一応、聞いてみた。やっぱり、だれもランチなんて持ってきていない。どうするつもりだ。運良くすぐに高速の休憩所が出てきた。ファーストフードも入っているし、じゃ、ここで買ってもらってこようと、車を停車。先が長いから早くもどるようにと家の夫は忠告する。
ところが、車内で、ランチを食べ、待っている私達をよそに、15分たってもだれも戻ってこない。一体どういうことだ。夫に子どもを預け、店内に入ってびっくり、みんな席について食事してるじゃないか。普通テイクアウトにするだろうと怒りがこみ上げるが、ここは辛抱、「先を急ぐから早めにすませて」と言い残し、車内へ戻る。やっと二人戻ってきたが、アイザックがいない。アイザックはどうしたんだと二人に聞くと、お祈りの時間だから祈りを捧げに行ったという。忘れていた。アイザックはイスラム教徒だったのだ。お祈り待ちでそれから15分ほどを4人とちびで過した。
やっと帰ってきたアイザック、その後、車内ではひっきりなしに彼の携帯電話が鳴った。そして、ずーっと電話で話している。パソコンをしている。隣のインド人プリンストンが話しかけるが、返事もそこそこにまたパソコン。そして今度はイアホンをして音楽を聞いている。この中で一番の年配者、いつも穏やかな顔をしているプリンストンもさすがに少し気分が悪い。どうもアイザックは僕達と話したくないらしい。なんてこぼし始めた。そんな様子にやっと気が付いたアイザック、プリンストンに片方のイアホンを貸してあげ、自分の聞いているトルコの曲の説明を始めた。
永遠と、黙々と、運転を続ける夫。たまに真後ろのスーシーに話しかけて見ているが、スーシーはわかったような分からないような返事。奥さん仲間のスーシー、私にはスーシーが言いたいことが良く分かる。彼女も、私の言うことが分かる。もちろん、文法的には夫の英語の方が正しいし、彼の使う単語の方が的をえているのだろう。でも、スーシーには通じないことがある。「さおり、彼はなんていったの?」と聞かれ、文法でたらめ、ただ単語を並べただけの私の話で彼女はやっと彼の言ったことを理解した。女同士、そして、同じ奥さん仲間。普段の生活で必要最低限の単語しか知らない私達にとって、難しい単語は余計に話しを分かりにくくさせる。だから、文法でたらめでも、よく使う単語を並べる方が分かり合える。あとはジェスチャーでなんとかなる。
お国自慢、歌自慢を繰り返し、なんとか目的地付近の出口に到着した頃にはもうすっかり日が暮れていた。お祈りの時間は前もって教えてくれとたのんでおいたのだが、アイザック、時間5分前になってお祈りの時間だから車を止めてくれと言い出した。街灯もほとんどない道で、運良くガソリンスタンドを発見、なんとかお祈りに間に合ったらしい。このアイザック、かなりマイペースだ。彼は車を降りてもドアを閉めない。彼だけが下りるときでも、一度もドアを閉めたことがない。「ちょっと、ドア閉めてください」と言ってみたが、聞こえていない様子。そんなアイザックの行動を気配り上手のスーシーはいつもフォローしていた。まるで王子みたいなアイザック、いつしか私達は彼のことをプリンスと呼ぶようになった。「なんであんなにマイペースなの」と愚痴る私にインド人のプリンストン「でも、あいつはいいやつだ」。
インター下りても相変わらずどこに向かっているのか分からないまま、下りて3つ目のガソリンスタンドで待ち合わせと言い残して電話を切ったロブ。3つ目までがかなり長い。普段都会のシカゴに住んでる私達にとって、3つ目のガソリンスタンドまでこんなにかかるなんて、しかもあたりは森みたいになってきた。もちろん真っ暗。本当にこの道で合ってるの?と心配になったころ、ようやく目的の場所に到着。ここからはロブの車についていくだけ。一安心のその頃には、とうに時計は8時を回っていた。娘よ、長旅で悪かったな。でも、子ども好きのスーシーが隣にいたお陰で、娘はぐずらずに、彼女なりにこの長旅を楽しんだ様子だった。
道中、「時間はたっぷりあるんだ。のんびり行こう」といったプリンストンの言葉が印象的だった。トルコ人アイザックにしても、ルーズといえばそうだが、日本人みたいにかっちりしていない。ある意味、日本みたいにカチカチの国の方が世界から見ればおかしいのかもしれない。勉強に追われ、ノルマに追われ、時間に追われ、いつも何かに追われながら生活している気がする。こうしていろんな国の人と触れるうち、のんびり生きるのも悪くないなと思えた。
寝る前なのに、パジャマにアイロンをかけるアイザック。カヌーは初めてといいながら、乗り込み、こげどもこげども同じところをグルグル回っていたインド人プリンストン、オレオ大好き、好奇心旺盛、夫をほめるのが専門のインドネシア人スーシー。頭にくることもたびたびだったけど、この人たちとの珍道中、二度と味わえない貴重な時間だったようなきがする。
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