樺沢さんの精神医学的アメリカ考察



著者略歴 樺沢紫苑
(本名 佐々木信幸)


1965年、札幌生まれ。札幌医科大学卒。
精神科医。

2004年4月より、イリノイ大学シカゴ校
精神科勤務。

著書
「北海道スープカレー読本」(亜璃西社)


 朝日新聞、週刊ポストなどに記事執筆。サブカルチャー、アメリカ文化に詳しい精神科医として、テレビ、ラジオ出演など、精力的に活動中。

メールマガジン「シカゴ発 映画の精神医学


バックナンバー

                 Tutto Orsi

シカゴの街は、クリスマスの飾り付けでひときわ美しさを増している。

クリスマスまでのホリデイ・シーズン。 アメリカ人はクリスマス・コンサートに行ったり、「クリスマス・キャロル」のようなクリスマの劇を見たりして、クリスマス気分を盛り上げて行くようだ。 アメリカ生活も二年目となった私は、そんなアメリカ人のやり方も少し見習って、クリスマス・コンサートに出かけてみた。

「ボストン・ポップス」のホリディ・コンサートである。 「ボストン・ポップス」と言えば、ジョン・ウィリアムスがずっと指揮者をつとめていたわけで、一度は「ボストン・ポップス」を生で聞きたいと思っていたので、渡りに船である。

レベルの高い演奏に満喫した。 「ホリディ・コンサート」ということもあり、ざっくばらんな雰囲気で、何箇所か笑いをとる場面もあった。 会場の人たちが、一緒にクリスマス・ソングを歌うという企画も良かった。

さて、会場は「UIC パビリオン」だったが、帰りにブルーライン「Racine」駅近くのイタリアン・レストランに寄ってみた。 特に事前の情報があったわけでもないが、地下鉄の駅を降りた時に目に入った「Tutto Orsi」と書かれた大きなネオンが、何か私を誘ったのである。

店に入るとピアノの生演奏で、クリスマス・ソングが聞こえてきた。 バー・スペースがピアノ・バーになっているのだ。 ディナー・スペースにいても、十分その演奏は楽しむことができる。 こんな場所に、こんな洒落た店があったことにまず驚く。 とはいっても、店はお洒落ではない。 建物は古く、むしろ店内は歴史を感じさせる。何か和むような、とてもいい雰囲気に包まれている。

料理は、グリルド・カラマリ、リガトーニ (フレッシュ・モッツアレラ、ベーコン、スパイー・トマトソース)、リゾットの3品を注文。 まずは、前菜のカラマリ(イカ)だが、火加減が絶妙だ。半生よりちょっと火が通った状態で、実に柔らかい。 ゲソもヤワヤワで、イカのモッチリとした食感がたまらない。 ガーリックの風味が弱からず強からず絶妙である。 そして、イカの下にはホウレン草が敷き詰められているが、これはイカと一緒に炒めたもので、イカの旨みがホウレン草に染みて実においしいのだ。 この一品を食べただけで、火加減といい、味付けといい、ここのシェフがかなりの腕前であることが伝わってくる。 続いてのパスタとリゾットは、自ずと期待感が高まる。

さて、パスタとリゾットが運ばれてきたが、その量の多さに驚かされる。 アメリカのイタリアン・レストランはどこでも量は多いが、それと比べても明らかに多い。 リゾットら至っては、ライス2合は盛られている。 3人でないと一皿食べられない量だ。

さて肝心の味である。 歯ごたえがシッカリとしたリガトーニの茹で具合が良い(リガトーニとはショート・パスタ、とがっていないペンネみたいな)。 ベーコンとモッツアレラをトマト・ソースでスパイシーに味付けした単純なものだが、噛むごとにベーコンのうまみが口の中に広がる。 そして、これもまたガーリックの風味がアクセントになって、スパイスのピリ辛さともあり複雑な味のハーマニーをかなでる。 モッツアレラがゴムのように伸びる伸びる。 20センチも伸びるか・・・。 そのチーズの弾力がパスタの食感とうまくマッチする。噛めば噛むほどおいしい不思議なパスタだ。

リゾットも、スパイスが効いていて、ユニークな風味である。ブラック・オリーブが色彩的にも、そして味覚的にも個性を放っている。 いろんな具が細かく刻まれて煮込まれているようで、複雑な味わいが楽しめる。非常に個性的な一品と言って良いだろう。

以上、パスタやリゾットというありふれた料理の中に、食感や味のアクセントなども加味された満足の品であった。 さらに満足なのは、値段の安さである。 カラマリが$7、リゾットが$14、パスタが$14ほどである。 ダウンタウンのイタリアンと比べると、$5は安くその上量は多いときている。

さて、たらふく食べた後は、バーに移動して、ピアノと歌を楽しんだ。 ピアノの2メートルほど前にカウンターがあって、演奏者、シンガーと観客との距離が近い。 そのうち、観客も盛り上がって歌いだした。 ちょっとピアノを聴いてすぐ帰ろうと思っていたのだか、何だか楽しくなってしまい、1時間もバーにいすわってしまった。 帰ることになると、店主らしきイタリアンのおじいさんが話しかけてきた。 とても家族的な感じがした。 「とても、良いお店ですね」と礼を述べて、店を後にする。

帰りは、雪が積もった街をテイラー・ストリートを通って歩いて帰った。 テイラー・ストリートといえば、リトル・イタリーである。 イタリアンの店が何軒もある。 この「Tutto Orsi」は、テイラー・ストリートからはちょっと離れてはいるが、この辺まで昔はイタリア人が住んでいて、昔から営業しているんだなあ、という雰囲気が感じられる。

私はテイラー・ストリートのすぐそばに住んでいるので、テイラー・ストリートのレストラン20軒近くをほとんど制覇した。 リトル・イタリーでは、「Francesca's」(1400 W Taylor St,)が断トツと思っていたが、意外にもリトル・イタリーのはずれに、こんな良いイタリアン・レストランがあったとは、灯台下暗しであった。 帰ってから調べたが、「ZAGAT」にも載っていない店だ。 味だけで言えば「Francesca's」の方が上だろうが、家庭的な雰囲気とピアノと歌。 値段とボリューム。 総合点で言えば「Tutto Orsi」に軍配が上がる。

シカゴにもこんな隠れた名店がまだまだあるかと思い、とてもうれしくなった。


Tutto Orsi

324 S Racine, Chicago
312-421-3636
http://www.tuttoorsi.net/


写真


イカのグリル


リガトーニ


個性的な味のリゾット


ピアノバー


店舗概観


ホーム | 初めての方へ | お問い合わせ | 投稿者&ライター募集中! | 規約と免責事項 | 会社概要

Copyright (c) 2005 US Shimbun Corporation. All Rights Reserved.