樺沢さんの精神医学的アメリカ考察



著者略歴 樺沢紫苑
(本名 佐々木信幸)


1965年、札幌生まれ。札幌医科大学卒。
精神科医。

2004年4月より、イリノイ大学シカゴ校
精神科勤務。

著書
「北海道スープカレー読本」(亜璃西社)


 朝日新聞、週刊ポストなどに記事執筆。サブカルチャー、アメリカ文化に詳しい精神科医として、テレビ、ラジオ出演など、精力的に活動中。

メールマガジン「シカゴ発 映画の精神医学


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           シカゴ・ナンバーワン・レストランに行ってみた

シカゴに昔からずっと住んでいる友人(アメリカ人)に、「シカゴのおいしい店を何軒か教えて?」と言ったら、「Chicago Magazineに載っている店がおいしい店だ」との答。あまり、「Chicago Magazine」は重視していなかったが、シカゴアンにとっては貴重な情報源であるらしい。

その「Chicago Magazine」の読者投票で1位になった店がある。シカゴアンの圧倒的な支持を集めた店、それが「TRU」だ。かなりの高級店で値段も結構高いという情報を得たが、先日「結婚記念日」ということもあり、奮発して出かけてみた。

かなりの人気店なので、週末は3ヶ月先まで予約が埋っているらしい。今回は月曜の夜ということで、数日前でも予約はとれた。

店はSt. Clair St.に面しているが、かなり分かりづらいので注意しよう。外から見ると店は真っ暗で閉店しているかと思う。ガラスに小さく「TRU」と書かれているだけだ。番地をメモしておいた方が良い。店の前になぜか「松」の鉢植がおいてあるので、ちょっとした目印にはなる。

店に入った瞬間に高級店であることがわかる。格調が高い。天井も高いし、落ち着いた雰囲気。そして、席数も少なく喧騒もない。

メニューだが$135、$110、$90の三種類。今回注文したのは、一番高い$135の「Chef Tramonto’s Collection」である。他と数十ドルしか変わらないが圧倒的に品数が多く満足度も高いので、迷わずこれを選んで欲しい。

さて、料理について詳細に書いて行きたいところだが、書かない方が良いような気もする。というのは、とてもサプライズが効いたメニュー構成になっているからだ。ここで、全品を写真入りで公開してしまうと、みなさんが行ったときのサプライズがなくなってしまう。これはつまらないことだ。

サプライズの一つの例は、写真1のキャビアである。キャビアとイクラが階段状に盛られている。こんな器自体見たこともないし、キャビアと一緒に食べる薬味の美しいこと。食べるのがもったいない。こんな感じで盛り付けや構成にサプライズが隠されているので写真の公開は数枚にとどめよう。


 料理を食べていて驚くのは、私と家内の二人の料理の盛り付けと味付けが全く違うということだ。例えば、フォアグラのソテーが出てきたが、私のはオニオンのソテーの上にフォアグラが盛り付けられていた。家内のはフルーツと一緒に盛り合わされ、フルーツソースがかけられていた。味も見かけも二倍楽しめるという趣向。それが、ほぼ全品そうなのだから、驚かされる。それだけで相当な手間になるから。

 それにしてもこのフォアグラは絶品だった。今まで食べたフォアグラの中で一番おいしかったと言っていいだろう。外側はカリッとして、そして中は少しレアになっていて口の中でとろける。フォアグラの味も濃厚すぎず、ソースの味付けも正に適切。味、食感、盛り付けすべてにおいてパーフェクトな一品である。

 スープも圧倒的においしかった。私のはオニオンのスープ。家内のはロブスターのスープだ。コクといい味の奥深さといい絶品である。思わずおかわりしたいほど。

こうした絶品の料理が、延々と十品以上も続くのだから、極楽とはこのことだ。また、フレンチには欠かせないワインのセレクションも良い。シャンペン、白ワイン、赤ワインをグラスで1杯ずつ飲んだが、どれもおいしかった。そして、ウェイターのワインの味の説明も全く適切で、説明どおりの味のワインが出てくるのにはビックリした。グラスワイン1杯が15ドル前後で少し高いのだけども、ワインを1口飲むと思わず「安い」と言ってしまう。

メインディッシュは、魚の後に、さらに肉が一皿出た。普通だとどちらか一つを選択するはずだが、とにかくいたれりつくせり。肉は、当然ステーキだろうと思ったが、そんな野暮なものはでない。ジビエ(野禽獣)である。私は鳩で、家内はウズラである。ここにきて、「ジヒエとはまた意外なものをもってくるなあ」と再び感心。正直、「鳩」というのは初めて食べた。フォアグラもたっぷりと添えられて、実に贅沢な一品だ。

さて、あとはデザートだけかと思えば大間違い。これでもか、これでもかと、ダメおしのように、サービスが延々と続くのである。

と料理について絶賛してきたが、この店の本当の素晴らしいところはサービスである。私がフレンチで一番重要だと感じるのは、料理と料理が運ばれてくる「間」である。早すぎず、遅すぎない。一品を食べた後、少しお喋りを楽しんで、会話がちょっと一段落した後に、サッと料理が供されるのがベストだ。「TRU」では、まさにパーフェクな「間」が演出される。これだけ絶妙な「間」で料理を出してくる店というのは、私が今まで訪れた2000軒のレストランの中でも数軒しかない。

最後の一皿を食べ終わるまでに、実に3時間半。これを「極上の時間」と言わずに、何と呼べば良いのだろうか。

さて、勘定だ。料理はコースで$135と決まっているが、ワインが結構高いので、勘定を見るのがすこし恐ろしかった。しかし何と!! 2人で360ドル(税込)である。これにチップをプラスするから、1人210ドルほどということになる。

安い!!

日本でこれと同じ料理を食べるとしたら、料理だけで3万円。ワインも入れれば5万円はかかる。というか、5万円払っても、これだけの味とサービスを提供してくれる店が日本に何軒あるのか、という問題になってくる。

今回「TRU」を訪れて思ったのは、「食」と「サービス」というのに、国籍はないということだ。国籍を超えた究極の形が、「TRU」では完成されている。

「TRU」の料理は、普通のアメリカ料理と比べると味は薄口でサッパリとしているし、デザートなども甘さ控えめである。日本人にとっておいしいのは当然としても、シカゴアンの多くがこの味に太鼓判を押すわけだ。アメリカ人が食べても日本人が食べても、あるいはフランス人が食べても「おいしい」と言わざるを得ない究極の食体験がここに体現されている。

シカゴに住んでいる以上、一度は行くべきレストランである。

TRU
676 North Saint Clair, Chicago
(312) 202-0001


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