Kuni のウィンディ・シティへの手紙



著者略歴 馬場邦子

アメリカの通信社東京支局、及びシカゴ支局で金融をカバー。サンノゼ・マー キュリー・ニュースの 東京支局長アシスタントを経て、フリーに。主にジャパン・タイムズにアート・ レビューを執筆。
2002年より、シカゴ郊外アーリントンハイツに住み、2008年日本に帰国。
公立小学校英会話講師。


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シカゴウェストンコレクション肉筆浮世絵が日本初公開!
〜美の競艶〜上野の森美術館で美人画展覧会開催中




 シカゴの実業家、ロジャー・ウェストン氏の肉筆浮世絵の大規模なコレクションが里帰りして、4月から大阪市立美術館、7月から長野の北斎館と巡回し、師走の上野の森美術館でその優美で艶やかな美人画が多くの人々を魅了している。

 展示替えをはさんで2回観たが、色香漂う表情の女性たちが自分を最大限に美しく見せる様々なポーズをとらえた壮観な絵画群に圧倒される。江戸・明治時代の日本の美意識が世界に通用できることがわかる。

 大量生産される版画の浮世絵と違って、肉筆浮世絵とは絵師が紙や絹に筆で直接描く貴重な一点物の作品。髪の毛の生え際のぼかし、華やかな着物の文様などの精緻な表現は、対象への深い思いを感じられる。

 今回の展覧会では、葛飾北斎、勝川春草、喜多川歌麿、歌川豊国、河鍋暁斎ら50人以上の絵師による肉筆浮世絵の名品が129点と勢揃いし、江戸初期から明治までの肉筆浮世絵の流れを体系的に展示している。ウェストン氏所蔵の肉筆浮世絵は、個人コレクションとしては世界有数の規模と質を誇る。浮世絵展はよく開催されるが、これだけの量と質の肉筆浮世絵を一気に展示されるのは珍しいという。

 ウェストン氏からのメッセージによると、40年前に日本文化に出会い、30代初めに京都、日光、伊勢などを訪れ、日本の伝統文化に魅了され、1984年より印籠を中心とした漆芸作品や根付などを収集し始めた。1990年代より肉筆浮世絵を収集し始め、美人画中心に時代ごとの遍歴をたどり、包括的なコレクションをめざし、研究したという。日本美術のコレクション数は1000点以上になるという。ウェストン氏はシカゴ美術館の理事も務め、2010年には同館日本ギャラリーの全面改築を単独支援した。

 見どころの作品をいくつか紹介しよう。
 17世紀中頃、「見返り美人図」で有名な浮世絵の祖と言われる菱川師宣が、江戸の浮世絵を開花させる。師宣は、大作「江戸風俗図巻」で上野の花見、中村座の歌舞伎、隅田川の舟遊びなど文化に興じる江戸の人々の様子を華麗に描いている。


菱川師宣「江戸風俗図巻」(部分) 絹本一巻 元禄年間(1688〜1704)頃 (c)WESTON COLLECTION

 
 京都で活躍し、江戸の浮世絵に影響を与えた西川祐信の風俗画「髷を直す美人」は、湯上りの美女の着物の上から透けている肢体を品のあるやわらかな表現でとらえた。風呂で温まったふくよかな女体から発する蒸気のようなものまで伝わってくる。








西川祐信「髷を直す美人」紙本一幅 享保年間(1716〜36)頃 (c)WESTON COLLECTION
       
 
 葛飾北斎の師匠で、役者絵の版画で人気を博した勝川春章の肉筆浮世絵は多く残っていて、本展でも艶やかな作品が4点展示されている。晩年は弟子に版画を任せて、自分は肉筆浮世絵に専念した。「浅妻舟図」の白拍子の格好をした遊女の清楚な顔の白さと鮮やかな袴の朱色の対比が印象的で、鑑賞者も思わず近づいて見入る。惹きつける作品の一つ。









勝川春章「浅妻舟図」絹本一幅 天明年間(1781〜89)もしくは安永年間(1772〜81)(c)WESTON COLLECTION 
      

 幕末を席巻した歌川派の有力絵師、歌川豊国の遊女などの様々な階層の女性たちの日常を描いた画集は、色彩の鮮やかさと相まって鑑賞者の想像をかきたてる。



初代歌川豊国「時世粧百姿図」(一部) 絹本二十四葉 文化13年(1816) (c)WESTON COLLECTION 

 
  
 勝川春章の弟子でかの葛飾北斎の美人画も3点でている。そのうちの一つ「美人愛猫図
」は、不細工な顔をした猫をかかえる江戸美人の色っぽいうなじと生え際の緻密描写に思わず息を呑む。この作品の展示横の描ききれていないおおらかな肉筆画2作品が対照的である。そのうちの一つ「京伝賛遊女図」は、墨絵のような余白の美も感じさせつつ、近代絵画への道をつなげるかのような作品だ。


(左)葛飾北斎「美人愛猫図」 絹本一幅 享和〜文化年間(1801〜18) (c)WESTON COLLECTION 

(右)葛飾北斎「京伝賛遊女図」 紙本一幅 寛政末年(1798〜1800)頃 (c)WESTON COLLECTION 

 
 明治以降の作品では、河鍋暁斎の「一休禅師地獄太夫図」は、建築家ジョサイア・コンドルの遺愛品で、女性の優美さと骸骨のグロテスクでユーモラスな描写の同居する不思議な世界観に圧倒される。





河鍋暁斎「一休禅師地獄太夫図」 絹本一幅 明治18〜22年(1885〜89) (c)WESTON COLLECTION

 立姿美人図は100図以上あり、華やかな着物の色彩と古風な決めポーズと共に、甲乙つけがたい美人の壮観図にため息がでる。花魁のしゃなりしゃなりと闊歩する姿が目の前に抜けだしてきて、思わずまねしたくなるほどだ。
 ホームページでは、読者投票による大江戸美人コンテストも開催している。
http://nikkei.exhn.jp/weston/index.php

 この美人コンテストの中に、私が気に入った藤麿の「美人戯犬図」の楚々とした美女がエントリしていて、北斎や暁斎という巨匠が作り上げた美人を大差で抜いて、堂々1位で票を集める。うなじにかかるほつれ毛や生え際から透けて見える肌の美しさ。ほっそりとした瓜実顔とつましやかなかんざしを包む髪の毛のボリュームのバランスのよさ。帯と着物の曲線と直線の交差する優美な流れなどに魅了される。2番人気の岸駒の「橋上美人図」のしかと一点を見つめる切れ長の眼とぼやけた日本髪の妖艶さにも引き込まれる。この2作品はお見逃しなく!

 12月22日より40点以上展示替えがあり、展覧会最終日は1月17日(日)。
 

■展覧会名:「シカゴウェストンコレクション 肉筆浮世絵 美の競艶」展
会期: 開催中〜2016年1月17日(日)
開催時間:10:00〜17:00(金曜日は20:00まで、入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日、1月1日(金)、1月11日(月・祝)は開館
会場:上野の森美術館(上野公園内) http://www.ueno-mori.org/
公式サイト:http://weston.exhn.jp/
学芸員による見どころトーク:12月29日(火)15時〜(20分)




                  文責及び1枚目の写真撮影:馬場邦子





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