アメリカ縦断。グレート・ミシシッピを行く

  Vol.6 “フィールド・オブ・ドリームス”の里、Dyersville(ダイアースビル)

●Text & Photo/ Shoko Nagano


 
ウィスコンシン州からミシシッピ川を越えると、そこはアイオワ州だった。
ミシシッピ川から内陸部に40キロほど寄り道をして、アイオワ州ダイアースビルに足を延ばした。


 
人口たった4000人ほどの小さな町の歴史は1837年、イギリスからの最初の移民が定住したところから始まる。その後、ドイツ南部ババリア地方からの移民も続いた。1847年、イギリス人のJames Dyer(ジェームス・ダイアー)が26歳でこの地に家族らと定住し、リーダーとして一大コミュニティーを作り上げ、この町は彼の名にちなんで「ダイアースビル」とい名づけられた。ちなみに、アメリカの中西部には“○○ville”という町名が多いが、たいていの場合は町の創設者の名を表していることが多い。
 その後、イギリス人移民たちはより良い暮らしを求めてこの町を離れていき、それにとって替わったのがドイツ移民だった。1910年ごろまでにはイギリス人の保有していた土地や財産は、そのほとんどがドイツ人に買い取られたという。

 余談になるが、ダイアースビルと聞くと必ず思い出す“数奇な物語”がある。
 数年前のこと、ドイツからアメリカに旅行にきていたGoerdt(グァート)という姓のドイツ人の友人が、これからダイアースビルに行くというのでその理由を尋ねたところ、「10年ほど前、全く見ず知らずのアメリカ人の男性から『自分のドイツのルーツを探しています。私の名字は“Goerdt”といいます』という内容のランダムメールを受け取り、不思議に思っていろいろ調べてみると、自分の祖父の出身地がメールの差出人と同じダイアースビルだった」という。Goerdtという名字が珍しかったこともあり、すぐに彼の祖先が1850年ごろにアメリカにやってきたドイツ移民だったという事実にたどりついた。時を経て、めでたく遠戚同士の再会を果たしたのがダイアースビルだったというわけだ。どんな小さな町にもアメリカの、移民の歴史あり、を地で行く話だ。

 そしてもうひとつ。こののどかな中西部の田舎町の名を一躍有名にしたのは、1989年にケビン・コスナー主演で公開された映画『フィールド・オブ・ドリームス』。アメリカ人が愛してやまない野球を題材に、父と子の絆、そこに1912年のワールドシリーズで発覚したシカゴ・ホワイトソックスの八百長スキャンダル(世に言う『ブラック・ソックス事件』)をからめた“ベースボール・ファンタジー映画”は、当時アメリカのみならず日本でも大ヒットをとばした。
 街の名前こそ出てこないが、映画のセットはこのダイアースビルにあるトウモロコシ畑のど真ん中に作られ、撮影が終了した後いったんは取り壊されたものの熱狂的なファンの声に応えて再度セットそのままの球場が作られたという。映画から25年経った今も、世界中からひっきりなしに映画ファンがこの地を訪れる。まさに「Holly Ground of Baseball(野球の聖地))なのだ。
 "If you build it, he will come." (「それを造れば、彼が来る」の声に導かれるように
自宅のトウモロコシ畑を野球場にしてしまった主人公レイ。ここから不思議な物語は始まる。



 「日本からも多くのファンが訪ねてきてくれるんですよ」と、この映画セットのオーナー&管理マネージャーであるデニースさん

この日は特別に“ゴーストプレイヤー”のおふたりも出迎えてくれた。
「外野のトウモロコシの中から(映画みたいに)出てきてもらえますか?」と注文をつけたら、喜んで何度もやってくれた。意外とノリのいいおふたり。


たかが、キャッチボール。されどキャッチボール。アメリカ人の憧れる父と子の原風景だ。
ここでキャッチボールをするためにグローブをもって訪れる親子も多い。


映画でもたびたび登場する、主人公の自宅から見た球場の景色・・・
この「自宅」は旧オーナーから買い取って、今は映画サイトの運営事務所として利用されている。


役のケビン・コスナーが映画撮影中にベンチに掘った落書きも、そのまま残っている


 2014年6月13・14日の両日、“フィールド・オブ・ドリームス25周年イベント”が開催され、ゲストのケビン・コスナーら旧キャスト陣、メジャーリーグのOB選手たちが25周年を盛大に祝った。(コスナーは映画撮影以降初めての来訪だったそうだ。)

 その際、この地で新たに進んでいるある計画が発表された。現在の球場のとなりに大小合わせて24の球場・施設を建設するという「オールスター・ボールパーク・ヘブン計画」。これが完成すれば、将来ここで全米の少年野球やソフトボールチームのリーグ戦開催が可能になるほか、プロの独立マイナーリーグ“北米リーグ”のホームとしても活用されるという。名前の通りまさに「野球天国」の誕生だ。
 
 「この“オールスター・ボールパーク”が目指すのは、国内初の本格的な野球・ソフトボールトーナメント施設であり、家族の素晴らしい思い出となる場所です。各チームは29週のシーズンの間、常にプロと同仕様の施設やテクノロジーを存分に使うことができるでしょう」と、プロェクト責任者でもあるデニースさん。
 25年経ってなお進化し続ける“野球の聖地”ダイアースビル。一本の映画がもたらした経済効果は計り知れない。映画の跡地が観光ブームとなることはままあるが、これほど長く愛され続けている理由は、ダイアースビルがいまだに古き良きアメリカの匂いを失わずにいることにあるのかもしれない。




  (つづく) ・・・・・・・次なる目的地は、アイオワ州Debuque(ダビューク) 



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【Dyersville】情報

■ ダイアースビル観光案内:http://www.dyersville.org/

■ 交通 :シカゴから約320km、車で約4時間。ダビューク空港(Dubuque Regional Airport) から車で約35分。

■ “フィールド・オブ・ドリームス”映画跡地(Field of Dreams Movie Site)
28995 Lansing Road, Dyersville, Iowa 52040
Tel: 1-888-875-8404
4~11月の毎日 9:00am〜6:00pm
www.fodmoviesite.com

オールスター・ボールパーク・ヘブン計画
http://allstarballparkheaven.com

■ National Farm Toy Museum
農業用のトラクター玩具を集めたユニークな博物館
1110 16th Ave. Ct. SE, Dyersville, IA 52040
Tel: 563-875-2727
www.nationalfarmtoymuseum.com

■ Dyer-Botsford Doll Museum
バービー人形やシャーリーテンプル人形など2000体を集めた人形博物館。
331 First Avenue East, Dyersville, IA 52040 
Tel : 563-875-2414
http://dyersvillehistory.com/dyer-botsford-house/

■ Basilica of St. Francis Xavier (聖フランシス・バシリカ・チャーチ)
104 3rd Street SW
Dyersville, IA 52040
Tel : 563- 875-7325.
http://www.xavierbasilica.com/





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